大切なものを選ぶこと




「ハイハイ、女の嫉妬は見苦しいよ。どいたどいた」




良いタイミングで由美子が言ってくれてやっと女子の集団はどいてくれた。




本当にこういう時は由美子たちに感謝しかない。





「ありがとね由美子」





「んーいいのいいの。私たち、秋庭さん激推しだから!」





「どういうこと??」





「あんなにいい彼氏はいないってこと!大事にしなさいよ!!」





飲みに行ったあの日から、由美子も加奈も真希も何故か弘翔をべた褒めする。




理由は教えてくれないし、あの日、私がどんな失態を犯したのかも教えてくれないけど…



大学前で待っている弘翔と三人とも挨拶するし、軽く話したりもする。




正直、彼氏と友達が仲良くしてくれてるのは嬉しい。







弘翔のおかげで不本意ながらすっかり大学内で有名人になってしまい、普通に廊下を歩いているだけなのにすれ違う人たちに何やらコソコソ言われている。




講義が終わってから弘翔の所まで行くこの時間が少しだけ憂鬱だったりもする。








「───美紅」






だけど、私を見つけた時の弘翔の笑顔を見るだけでいろんなことが全部吹っ飛ぶ。




なんでこの人は毎回、私を見つけるとこんなに嬉しそうな顔をするかな。




毎日一緒に居て、今日だって朝ちゃんと会ってるのに。



そんなに嬉しそうな顔されたら嫌な事なんか考えてるのが馬鹿らしくなる。






「ごめん弘翔、待った?」





「いや、今来たとこだ」





いつも通りの会話をして手を繋ぐ。




以前、大学前なのに普通にキスをしようとしてきたからそれは全力で止めた。






「美紅~楽しんできてね!」





「秋庭さん、美紅の事よろしくお願いしますね!」





弘翔と一緒に大学前にいた真希と由美子に声を掛けられる。




二人がいるのすっかり忘れてた…。加奈は今日は全休だからいない。







「──じゃ、行くか美紅」




弘翔と真希と由美子と校門前で他愛もない話をしてから目的の店へと向かう。




最近はこれもデフォルトになりつつある。




その日によってメンバーは違うけど、大学前で待つ弘翔と普通に会話をする私の親友たち。嬉しくて擽ったい。





一回だけ5人でお茶しに行ったこともある。




今度は由美子の彼氏も呼ぼうという話で盛り上がった。