──あれから2週間が経った。組への面通し?が終わり、あの日以来、弘翔は周りの目を全く気にしなくなった。
そして、弘翔との生活にもすっかり慣れた今日この頃。
というか、私をひたすら甘やかしてくる弘翔に慣れた今日この頃。
基本的に夜に仕事がある弘翔は、私が起きる2~3時間前に帰宅する。
つまり23時~5時くらいまでが仕事。
仕事から帰ってきてそのまま寝るわけではなく、朝ご飯を用意してくれている。
だから、私は毎朝、弘翔の低くて少し掠れた甘い声と朝食のいい匂いで起こされるわけだ。私を大学に送り出してから寝ているらしい。
私の大学が終わってから弘翔の仕事までの時間は、大学まで迎えに来てくれる弘翔とそのままデートしたり、二人で家に帰ってまったり過ごすことが多い。
過保護な彼氏様は私がバイトの日は『夜遅いから』と言って、毎回終わりの時間に迎えに来てくれる。
そして今日は…弘翔とかき氷を食べに行こうという話になった。もう6月で蒸し暑いしね。
こんな日は冷たいスイーツにかぎる。甘党彼氏万歳。
「みーくー!今日デートでしょ?」
「え!?なぜバレた…」
「そんな嬉しそうな顔してたら誰でもわかるよ」
今日の最後の講義の履修が被っている由美子に言われ、顔を引き締める。そんなに顔に出ていたか…。
でも仕方ない。好きな人とのデートならテンション上がるでしょ。
さして面白くもない講義中、真希からは『大学の前で秋庭さん待ってるよー』と連絡が入っている。
無意識に口角が上がってしまうのも許してほしい。
だけど最近…問題が一つ…。それは…
「ねぇ、大学の前にいる人って本当に横手さんの彼氏なの?」
講義終了と同時に5~6人の集団に取り囲まれることだ。
さすが女子大。女子って怖い…。
弘翔が初めて大学前で待ってくれていた時なんか、芸能人だと思われてちょっとした騒ぎになった。まぁ…謙遜とか抜きにして、弘翔はその辺の芸能人より整った顔をしているから。
問題は本人にその自覚がないことだけど…。
弘翔が待っている相手が私だとバレれば、女の子たちの矛先は私に向いた。
暴力とか嫌がらせとかはないけれども嫌味は言われる。
でもまぁ…仕方のないことかな、とも思う。
あれだけ人目を引く男前が私なんかと付き合ってるんだもん。
「そうですよ~あの超絶イケメンは美紅の彼氏様で~す!」
嫉妬に満ちた表情で私の進路をふさいでいる集団相手に、空気読めないふりをして由美子が助け舟を出してくれた。
「正直、釣り合ってなくない?」
「横手さんってさぁ、前の彼氏もイケメンだったよね。男の顔にしか興味ないんじゃないの」
「てかさ、自慢げに大学前で待たせておくとかウザいんだけど」
いやいや違います。私は貴方たちみたいな人がいるから、何度も弘翔に『大学前で待つのやめて!というか、迎えに来なくて大丈夫だから!』って言ったんですよ…。
だけど弘翔さんは『ん?俺が迎えに行くと迷惑か?』ってめちゃめちゃ寂しそうに言ってくるんですよ。『少しでも長く美紅と一緒に居たいだけなんだけどなぁ…』と悲しそうな表情で言ってくるんですよ。
大好きな人にこんなこと言われたら普通は断れないじゃないですか。
開き直った極道の男は怖いんですよ。可愛くて。
だから、断じて、私が自慢するために弘翔に迎えに来てもらってるわけではない。
嫉妬もやっかみも言われすぎて、最近は慣れてしまった。
気さくで社交的で、モデル並みに男前な弘翔が女子受けするのは分かり切ったことだ。
いちいち言い返しても仕方ない。
