─弘翔side─
「おい弘!!」「弘さん!!」
美紅と別れてからゆっくりとボロアパートへと足を進めていると、聞き慣れた声に呼ばれる。
あ、こりゃ、怒ってんな…
苦笑しながら片手を挙げて振り返ると、思っていた奴らだった。
「そんなに怒るなよ、高巳(たかみ)、純(じゅん)」
「俺が怒ってるってわかってるなら毎週毎週同じ曜日の同じ時間に脱走すんなよ、マジで」
「いやあのアパート、ボロすぎて隣の部屋のヤッてる音とか完全に聞こえてくるんだよ。あんな中で寝れねえよ」
俺の言葉に高巳は不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。
「ですが弘さん、今回は本気で命狙われてるんですから少しは自重してくだせえ」
「わかってるよ、純」
「なんで純さんの言葉には素直なんだよ!!」
「そりゃ純は俺の第二の親父みたいなもんだからな。
お前とは格が違うぞ」
「え、なにこれパワハラ!?俺めっちゃ傷ついたわー!てか純さん!何ちょっと嬉しそうにしてんすか!弘の右腕は俺ですからね!?!?」
「「自称な」」
「うわっ二人そろってひどい!俺泣くよ!?泣いちゃうよ!?」
「勝手にやってろ、行くぞ純」
「へい。
弘さん、本家でおやっさんがお待ちです。アパートの前に車を用意してあるんで、そのまま向かいましょう」
「わかった」