「ごめんね美紅ちゃん。聖ちゃんこんな不機嫌面で不愛想だから勘違いされやすいけど、怖くないからね」





美しく笑いながら言う楓さんに小さく頷く。




確かに、近寄りがたい感じがするけど、決して怖い人ではなさそうだ。






「聖弥さん」




一通り自己紹介が終わったところで弘翔が声を掛けた。




いつもとは違った…極道の声。






「親父には面通ししました。俺の大事な女です。春名組でも秋庭の若頭の女として認めていただけますか」





「………………」





「………………」





「…あぁ、承知した」






極道の貫禄…いや、組長の、人の頂点に立つ男の貫禄。




弘翔と聖弥さんが目線だけで何を話したのかはわからないけれど、話はまとまったようだ。






「…組の方には俺の口から通しておく。三季会の方は?」





「次の会合の時、親父が正式に公表すると思います」





「そうか…わかった」





「あっ…あの…」





「ん?」






弘翔と聖弥さんの会話に思わず口を挟んでしまった。




でも、





「三季会って…?」





昌さんが会長で、聖弥さんが副会長だっていうのは聞いたけど、よくわからない。




以前、高巳に組のことをまとめて説明してもらったときにも出てきた名前だ。





「国内には三つ大きな組があるんだよ。それが秋庭、春名、柊だ。昔から揉めていたんだが組の規模があまりにも大きすぎてな、無駄に血を流すくらいなら同盟を組んで一つの派閥を作ろうって話になったんだ」





説明してくれる弘翔の話に真剣に耳を傾ける。




私はまだ、この世界のことを知らなすぎる。




この先、弘翔と共にいるのならば知っていなきゃいけないことだ。





「で、特に秋庭と春名は長年いがみ合ってたからな。簡単に和解とはいかなかった」




だから…





「楓が春名組に嫁いだってわけだ」






弘翔は簡単に言ってるけど…それって…





「政略結婚よ」





事も無げに言った楓さん。





穏やかに笑っているけど、今の時代、政略結婚なんて本当にあるんだ…。