『ほら聖ちゃんも!挨拶!』と楓さんに促されて立ち上がった男の人は…
物凄く身長が高かった。
185㎝ある弘翔よりも大きいので多分、190㎝くらいある。
遥輝さんとは違って黒髪の短髪、和服…(着流しっていうのかな?)を着こなしている姿は浮世離れしているくらい恰好良い。
同じく和服姿の楓さんと並んでいると、美男美女を通り越して、言葉では言い表せないくらいに美しい。
だけど、前髪を後ろに撫でつけてある髪型や、服の上からでもわかるくらいについた筋肉、それに…顎の辺りにある傷が極道であることを物語っている。
「………………」
「………………」
「……横手美紅といいます。よろしくお願いします…」
「………………」
「………………」
「……あぁ、話は聞いてる」
沈黙に耐え切れず自分から名乗ると少しの間の後、言葉が返ってきた。
私のことを見定める視線が、さっきの昌さんと同じだ。
「春名聖弥(はるなせいや)。春名組6代目組長を世襲している。それと、三季会の副会長を務めている」
組長…なんだ…。
だからさっき弘翔が頭を下げていたのか。
落ち着いた雰囲気と絶対的なオーラで、組長であることは簡単に腑に落ちた。
「別に…怒っているわけでも不機嫌なわけでもない。……楓以外の女と話すことが苦手なだけだ。気にしないでくれ」
ポツリと聖弥さんが言葉を落とすと…
「「ッッハハハッ!!」」
弘翔と楓さんの笑い声が重なった。
同時に聖弥さんの眉間にグッと皺が寄る。
「高巳がよく『極道の男の愛は重い』って言うだろ?」
「うん」
「あれ、聖弥さんが発端だから。この人、見てるこっちが恥ずかしくなるくらい楓のこと好きなんだよ。大丈夫。口数が多い人ではないけど、優しい人だから。俺が保証する」
「……弘!!」
弘翔の言葉に慌てたらしい聖弥さんの声が部屋に響いた。
眉間の皺がとれた、少し照れたような慌てた顔は…確かに優しそうで、格好良かった。
