大切なものを選ぶこと





「はいはい。桜たちも弘もその辺にしておきなさい」





見かねたように、蘭ちゃんを抱っこしていた椿さんが声を掛けた。




確かにこのままではカオスな状態が終わらない…。





「桜たちは晩ご飯食べていくんでしょう?」





「どうしよっかハル君」





「「食べていくっ!!」」





「だそうだ」





椿さんの言葉に大雅くんと凌雅くんが反応して、桜さんたちは夜ごはんを食べてから帰ることになったらしい。






「じゃ、夕飯の準備を手伝いにいきますかな。チビ達、あんまり迷惑かけるなよー。遊んでもらうなら暇そうにしてるおじさんたちにしろー」





「「はーい!!」」






‘よっこらせ’と腰を上げた遥輝さんは‘じゃまた後でね’と私と弘翔にヒラリと手を振ってからどこかに行ってしまった。






「秋庭じゃ飯は全部、男が作る決まりなんだよ。後で俺も手伝いに行ってくるかな」





「そうなんだ」





「組とは関係なくてもハル君も家族の一員だからね!秋庭に顔出す時はハル君も秋庭のルールに従うのよ」





桜さんに説明してもらい、なるほどと納得した。








───すると、スッと襖が開いて、昌さんともう一人男の人が入ってきた。




誰だろう…






「こっちの話は終わったよ。今、応接室にいるから挨拶してきなさい弘」





「あぁ」





「あ、紹介しておくね美紅ちゃん」





昌さんがそう言うと、隣にいた男の人は深々と頭を下げた。





「初めまして。秋庭組幹部、組長付き側近をしております土方誠(ひじかたまこと)と申します。以後、お見知りおきを」





頭を上げた土方さんはノーフレームの眼鏡とグレーのスーツがよく似合う物腰柔らかそうなイケオジだ。




極道の採用基準って顔面偏差値なんだろうか…







そんなくだらない疑問を抱えたまま、もう一人のお姉さんに挨拶するため弘翔と共に部屋を後にした。