「ちょっと!ハル君!子供たちの前ではやめてって!」
「ごめんごめん。弘が俺のこと疑ってたみたいだから弁明を…ね?」
桜さんの髪を漉きながら言う遥輝さんの瞳は温かくて、優しくて…。
あぁ…心底、桜さんのことが好きなんだろうな。
桜さんと遥輝さんの間に流れる温かい空気は長い時間をかけて作り上げた‘家族’の温かさで、なんとなく羨ましい気持ちになる。
それにしても、弘翔って人前でこんなことするタイプだったっけ…?
チラリと横目で弘翔を伺えば、少しだけ気恥ずかしそうな表情。
「あー…すまん。嫌だったか?」
「え?」
「俺、人より嫉妬深いんだよ。心底惚れてる女が俺以外の男に笑いかけてるなんざ…悪いが我慢できない。…たとえ身内相手でもな」
小さく落とされた言葉に私が呆気に取られてる間に桜さんと遥輝さんは二人して小さく笑っている。
「極道の男は愛は重いから気をつけなね、美紅ちゃん」
笑いながら言う桜さん。
いつだったか高巳にも同じことを言われたような…
「極道じゃなくたって、俺の愛も十分重いだろー?」
「んー?ハル君の愛は軽いかなー」
「え、そういうこと言っちゃう?」
「うそうそ」
千賀夫婦がイチャつきだしたのを横目に弘翔に肩を抱かれた。
そして、誰にも見られていない角度で唇に甘いキスを一つ。
妬いているらしい弘翔の少し拗ねたような顔はカッコよくて…少しだけ可愛い。
「……弘翔?」
「俺の愛は、重いぞ」
「いいよ。弘翔になら…本気で愛されたい」
「言ったな。とことん俺に堕ちてもらうぞ。俺の心も身体も…思考も全部くれてやる。代わりに…美紅の全てをもらう」
泣こうが喚こうが、後悔して離してくれと懇願しても。
二度と離してなんかやるか。
俺の自他共に認める人一倍強い独占欲
受け止めてもらうぞ。
愛しい、愛しい、俺の最愛の人。
───人目もはばからず、きつく優しく弘翔に抱きしめられた。
『組に面通ししたら制限がなくなるから弘の独占欲が暴走するぞー。美紅ちゃんファイト!』
以前、高巳が冗談口調で言っていたことは冗談ではなかったのかもしれない。
まぁ、いいか。
弘翔の嫉妬や独占欲を受け止める自信がある…それくらい、秋庭弘翔が好きだ。
