「はぁ、香澄さんそれは無しだって・・・本当に心臓に悪い」
俺こと、片端康孝は、少し苦難していた。
それはこの雪乃宮高校の生徒の一人である、遄水香澄であることはいうまでもない。この少女、いじめられていたのを、俺が助けたのだが、誰にも言わないでくれと嘆願されてしまい、
そして個人的に相談にのるとして、そのやり取りをしていたのだが、香澄が自由とは何かと聞いてきたので、答えたのだが、
その後俺はやらかしてしまった。信頼できる人は俺だといってきた。
さらに、
自由を一緒に探してみたいとまで、言ってきやがった、どうするべきか・・・
「・・・先生。・端先生!片端先生!!」
「あ、はい!なんでしょうか、飯野先生」
「何回呼んだら返事してくれるんですか?!ってそうじゃなくて、例の資料、まだできないんですか?」
「あ、あぁ例の資料ならここにすでに完成しているよ」
「あ、そうなの?それなら助かるわぁ。なんかごめんなさいね」
「いや、ボーっとしてた俺も悪い、すまなかったね」
いきなりこれは本当に心臓に悪いと思いつつ、香澄から帰ってきたメールにもう一度目を落とした。
・・・やっぱり、心臓に悪いよな・・・これ。
とはいえ、このままだと俺がどうにかなりそうなんだよな・・・どうしたものか本当に
「明日、少し気にかけてみるか。どうせ学校に居ると思うし・・・」
それから数時間が過ぎ、仕事に没頭していた。
香澄さんのことを忘れようと没頭したが、忘れることは無かった。俺はどうしてしまったんだか・・・
「まぁわかったら苦労しないよな・・・」
「何が苦労しないの?片端先生」
「あ、飯野先生。さっきぶりですね」
「そうね、そういえば、遄水香澄さん。彼女今日休みって聞いたんだけど、何かあったのかしら?」
「それ、俺に聞いてどうするんですか?飯野先生」
「あら?うわさを知らないの?この学校、めちゃくちゃいい学校に見えて、いじめがたくさん起こってるのよ?」
「そういえば、そんな噂もありましたね、もっとも、うわさが本当かなんて、生徒の目を見れば一目瞭然ですけどね」
「そうなのよねぇ、そういえば、ずっと気になってたけど、今日やけに仕事に集中してたわね。どうして?」
「さぁ?いつもどおりじゃないですか?」
「本当にいつもどおりだった?私にはそうには見えなかったけど」
正直図星を突かれたのだが、長年培ったポーカーフェイスは伊達ではなかった
「そういうあなたは?何かずっと上の空でしたけど?」
「あら?よくわかったわね」
「声をかけてもなかなか答えないのは俺だけではないということです。覚えておいたほうがいいですよ?飯野先生」
「まったくね、これは覚えておいて方が便利だわ」
「本当に便利ですよ。色々な人のことが分かりますから」
これはおれ自身が体験したことだ。
前任していた学校でいじめがあったが、それを摘発したのは生徒ではなく、この俺だった。
いじめていた奴の目を見て、うそを見抜き、問い詰め、いじめていたことを認めさせた。
俺はただ質問しただけだったが、向こうにとっては恐怖の目だったらしい。いじめていた奴が改心し、俺の元にやってきたときに聞いた話だが「先生、俺たちを問い詰めてたとき、すごく冷酷っていうのかな?そんな感じの目をしてて、すごく怖かったっす」
と聞いて、正直自分でも驚いた、何せそこまで冷酷な眼をしていたつもりは無かったからだ。香澄にもいずれそうしてしまうのではないかという恐怖心があった。だが、香澄さんのメールで救われたのだろうか?
そうでなかったとしても、きっとこの先救ってくれるだろうという期待もある。が、所詮期待でしかない。
スマホにメールの通知音がなった
「誰からですか?片端先生」
「よく相談してくる友達ですよ」
そういって、俺はメールに目を落とした。
【片端康孝さんへ
どうしましたか?もしかして私、さっきのメールで気分を悪くされたならすみません。謝ります。だけど、本心なんです。自由を探してみたいんです。一人で探すのは、確かに難しいんです。だからこそ片端先生と探したいんです。御願いします。一緒に探してください!次会うときに答えを聞かせてください
遄水香澄より】

だから香澄、それ本当に心臓に悪いんだって、と心でつぶやきながら、返信をした
【遄水香澄さんへ
こちらこそ返事も返すに申し訳ありませんでした。色々仕事が重なってしまって返事を返すことができませんでした。本当に申し訳ないです。だから、決して謝る必要はないですよ、香澄さん。返事は相談される日にします。それまでは待っていてください
片端康孝より】

また変なことでも打ったのかはわからないが、香澄からの返事はなかなか来なかった。それ一時間くらい続いたころに、やっと返事が返ってきた。
【片端康孝さんへ
返事が送れて申し訳ありません。母親にあまり見られないように返信をしているので、かなり遅れてしまいました。いろいろ個人的に相談しているところを見られると、私の親ってすぐに、親離れしたのね?!今日は赤飯よ!とか言うので、あまり見られたくないんです。返事、本当に聞かせてくださいね?私は本気ですから。よろしく御願いします
遄水香澄より】
ラインでのやり取りなのに名前をつけるのは、おそらく最初に送ったラインでそのようにしたからだろう。
だけど、俺はそのときは思いもしなかっただろう。
今こうして返事を求められたり、はたまた質問に答えたりと、しなかっただろう。普通なら。
彼女はどこか普通じゃない。少なくとも俺にとっては。きっと何かひきつけるものがあるのだろう。あるいは・・・そう考えていると、もう一通返事が来た。
【片端康孝さんへ
別に私は何もひきつけるものは持っていませんよ?by香澄】
短い文章の中に突っ込みどころ満載なのだが、とりあえず一つだけ言うならば、彼女はエスパーかなんかか?!
再び返信が来た。すでにいやな予感しかしない。
【from康孝さん
私はエスパーでもなんでもありません。ただのいじめられている高校生ですby香澄】
やっぱりエスパーやんけ!と心の中で思ったのだが、それは心の中に秘めることにした。きっとどこか惹かれるのだろうが、そんなことを思っていたらまたメールが来ると思って思うのをやめた代わりに、返信をすることにした。
【遄水香澄さんへ
よく僕の考えていることが分かりましたね。どこかに盗聴器でも仕掛けられてるのだと思いましたが探しても無いのでそれも無いことでしょう。本当にエスパーみたいでしたよ。思ってることがそのままメールで否定されたんですから。正夢でもみたんですかねあなたは。とりあえず、私はこれから自宅に戻りますねby康孝】