どうしよう…私どうすれば…

「そ、そうだ救急車…」

私は震える手でスマホのボタンを押し、救急車をよびました…。そして救急隊の人に直ぐに行くので待っててくれと言われ、その間に紗菜へ電話をしました…。誰かに助けて欲しくて…

((もしもし?麻鈴?どうしたの?))

「うっ。うっ。紗菜ぁー!お父さんがっ、お父さんがっー!」

((ま、麻鈴!?どうしたの?大丈夫?しっかりして!どうしたの?))

「お、お父さんがっ倒れててそれで…よ、呼びかけてもへ、返事しなくて…」

私は紗菜の声を聞いた途端涙が溢れてきて、しゃくり上げながら状況を説明しました…。

((と、とりあえず救急車にはでんわしたんだね?じゃあちょっと待ってて!今いく!))

そう言うと紗菜が電話を切りました。

「はぁはぁはぁ。ま、麻鈴!ドア開けて!」

「さ、紗菜…うっ。う、うん」

「麻鈴!」

「さ、紗菜ぁー!うわああああん!」

「麻鈴…大丈夫大丈夫だから。とりあえず救急車が来たら私のお母さんが働いている病院へ運んでもらお?」

紗菜が私を抱きしめて背中をさすりながら宥めるように提案した。

「うっ。うっ。う、うん。」


ー ピーポー、ピーポー、ピーポー ー

「あ、救急車来たみたいだよ。麻鈴…私も一緒に行こうか?」

「う、うん。お願い。」

「分かった。」

「ひ、弘樹には、連絡し、しないで…落ち着いたらわ、私からするから…。」

「そんな事今は心配しなくていいから。分かってるから。」

「う、うん…。」

そして私は紗菜に付き添われながら救急隊の人に説明をして、救急車で紗菜のお母さんが働いている病院へお父さんと一緒に向かいました。

お父さん…ごめんね…。私があんな事を…言ったから…

「麻鈴しっかりしな!麻鈴のせいじゃないから。泣いてる場合じゃないんだよ?」

「う、うん。分かってる、分かってるけど…」

「おじさんには麻鈴しか居ないんだよ?その麻鈴が弱気でどうするの!」

紗菜私の手を強く握り、私を励まし続けてくれました…

やがて救急車は病院へ付き、お父さんはひとまず救急治療室へ運ばれました。

「紗菜!どうしてここに?」

救急車から降ろされたお父さんを運びに来た紗菜のお母さんが驚いた様子で私達の方へ来て訪ねた。

「お母さん。今運ばれた人は麻鈴のお父さんなの。」

「お、おばさん…どうかお父さんを助けて下さい…お、お願いします…」

「分かったわ…とりあえず待合室で待ってて?詳しい事が分かった伝えるわ。」

「麻鈴…行こ?」

「う、うん…。」


私達はただ待っていました。紗菜のお母さんからの知らせが来るのを。待つことしか出来ませんでした…。

「あっ!お母さん。」

「麻鈴ちゃん…。待たせたわね。」

「お、お父さんは…?お父さんはどうなったんですか?」

「大丈夫…落ち着いて?実はね?あなたのお父さんは心臓が昔から弱いみたいなの。今日のは心臓が何らかの原因で発作が起きて意識を失ってしまったの。でも大丈夫。意識は戻って命に別状は無いわ。あと数秒遅れていたら分からなかったわ…。よく早めに通報してくれたわね。偉かったわ…。」

「そ、そうですか…ありがとうございます。本当にありがとうございます…。」

「麻鈴…!良かった…本当に良かったね。」

「…っ!うん。」

「意識が戻って容態も落ち着いてるから会いに行っても大丈夫よ。」

「っ、はい!ありがとうございます。」

「麻鈴。私はここで待ってるから。」

「うん…。」

お父さん…。

「ん…まーちゃん。」

「お父さんっ。ごめんね…本当にごめんなさい。」

私はお父さんに駆け寄りひたすら謝り続けました。

「まーちゃん…。大丈夫まーちゃんのせいじゃないよ。お父さんが昨日薬を飲み忘れたのが行けないんだ…。」

「でも…私があんな事言ったから、それで薬を飲み忘れちゃったんでしょ?」

「違うよ。確かにまーちゃんの言葉には驚いたけどお父さんが、行けないからね。昨日は恥ずかしいけどまーちゃんの誕生日だからってはしゃいでたから…。」

お父さんが照れながら笑った。

「そうかもしれないけど…私があんな…。」

「良いんだよ…気にしなくて。確かに何も聞かせないで毎年同じプレゼントを、渡されたら混乱するよ…。お父さんの方こそごめんよ…。」

「お父さん…。」

「麻鈴。もうここまで来たら話すよ。あのプレゼントの事…。」

お父さんがいきなり私を愛称じゃない呼び方をして、真剣に私を見つめる。

「でも…お父さんは目覚めたばかりだし、今日は休んだ方が…。」

「良いんだ…麻鈴にとっては辛いかも知れないけど、お父さんがいつまたこんな事態になって一生目覚めなくなってからじゃ遅いんだ…。」

「そんな事…」

「お父さんが麻鈴に話せずに逝ってしまったら、きっと後悔する。だから聞いてくれる…?」

「…分かった。」

「実は…あのお誕生日プレゼントは、お父さん"から"ではないんだ…。」

「え…?それってどういう…」

「あのプレゼントは…お母さんが死んでしまう前に、麻鈴に渡せるようにと…全部作ってお父さんに託したんだ。それで必ず一年ごとに麻鈴に、渡す約束をした。」

お父さんが少しずつ落ち着いて話す。

「そして…その事を告げるのは麻鈴が高校を卒業する時にして欲しいとお母さんにはお願いされてた。でも…今回の事で麻鈴に対して説明する必要があるとお父さんは思った。だからきっとお母さんも許してくれると思う…。」

「…でもなんで押し花の栞なの?」

「それはね?お母さんが昔から花が好きだからだよ…。

それも花の形とか咲き方もそうだけど、花には花言葉があるという事を知ってから、もっと花を好きになったみたいだった…。麻鈴は小さかったから覚えてないかな…昔はよくお母さんと散歩で花畑を見に行ってたんだよ?

お母さんはよくその事を、思い出しながら嬉しそうに話してたよ…

だからきっと麻鈴にプレゼントしていた花にも何か意味があると思うんだ…。ごめんね?お父さんにはその意味をお母さんが教えてくれなかったんだ…。多分麻鈴が前に話してた夢の内容はその時の思い出何じゃないかな…。」


お父さんが悲しそうに話してくれた…。

「…ありがとうお父さん。話してくれて…。もう一つ聞きたいんだけど…いい?」

「うん?なに?」

「あのね…お母さんは何で死んじゃったの…?」

「それは…。そうだよね…、聞きたいよね…」

「…うん。」

「…分かった話すよ。でもお父さんが退院して家に帰ってからでもいいかい?必ず話すから。但し麻鈴には少し聞く覚悟が必要なんだ…だから、家に帰ってさっき話した花の意味を調べながら、覚悟を決めておいて欲しい…。」

お父さんが私をじっと見つめ、言い聞かせるようにそう言った。


「…分かった。」

「いいかい?もしお父さんの言葉を聞いて思う事があっても絶対に、それは間違ってるって言える。だからただ聞くだけて良いから。」

「う、うん。」

そして私は待合室で待っててくれた紗菜に容態を話し、家に帰った。

確か、毎回誕生日プレゼントは机のうえの箱にしまってたはず。

「あったこれだ!うん。確かお母さんが死んじゃってからくれ始めたから、13枚かな。4歳の時からだと思うから…。うん!ある!」

でも何で昨日貰ったのだけ紙袋に入ってるのかな?もしかしてまだ中になにか入ってた?

「あ、なんか紙が…。なんだろう?もしかしてお母さんから!?」

ー麻鈴へー

これを読んでいるってことは無事に16歳の誕生日を迎えられたってことかしら…。

16歳の麻鈴はどんな感じかしらね?大人っぽくなっているかしら。

ごめんね…1番母親が、恋しい時に一緒にいてあげられなくて…。
きっとお父さんに、何も聞かされずぎくしゃくしちゃってるでしょ?

お父さん根が真面目だからお母さんとの約束をしっかり守っちゃってるわね。

でもきっとお父さんは麻鈴とぎくしゃくしてるのに耐えられなくなって栞のことは話してるかもしれないな…。

この栞の花はね?昔麻鈴がまだ小さかった頃一緒に花畑で見た花たちなの…。お父さんからは花言葉の事も聞いてると思うけど、一番最初に、栞をプレゼントするのがきっと4歳だったはずだから、花言葉はあまり意識してないの…。お母さんはね?この栞を作る時に麻鈴が生まれてから今までの成長や思い出を思い出しながら最初の3枚は作って、4枚以降はこれからどんな風に育っていくのか。こんな風になっていてほしいな…っていう思いを込めて作りました…。そしてその思いが、麻鈴を悲しい事や、辛い事から守ってくれるように願って…。

麻鈴…お母さんが死んじゃった理由はきっとまだお父さんが話していないと思うけど…いつかきっと話してくれるからその時まで待っていてね?だからこの手紙にもその事については書きません…。

麻鈴にはお母さんが、早く死んじゃうことでたくさん辛い思いをさせているし、悲しい思いもさせているよね…?本当にごめんなさい。でも…麻鈴なら大丈夫。って信じてるわ。お父さんやきっと大切な友達が麻鈴のそばにいてくれてるって分かっているから…。お母さんはそばにいないけどいつもあなたを見守っているわ…。

お母さんも麻鈴の成長をもっと見ていたかったな…。本当にごめんなさい。ずっとずーっと愛してるわ麻鈴…。

お父さんといつまでも仲良くしてあげてね。

ーお母さんよりー

「うっ。うっ。お、お母さぁーん…。」

私はお母さんの手紙を何度も何度も読み返し、いつしか目の前が涙でぼやけて見えなくなっていました…。

ー約束endー