学校から歩いて20分、寂れたアパート。
2階の203号室。
表札には、渋谷と書かれていた。


来て、しまったけど。
先週亡くなった人の家に押し掛けるって。
しかもその子の話を聞きに来たなんて。
親御さんに迷惑だろうか。


ここまで来て何言ってるんだって感じだけど。
手土産も忘れちゃったし。
……どうしよう。


玄関の前で右往左往していると。
このアパートの住人だろうか。
ひとりのおばさんが私を怪訝そうな目で見ていた。


ええい、こうなったらやけくそだ。
一呼吸おいて、インターホンを勢いよく押した。



「……はい。」



しばらくしてドアが開くと。
すっかり憔悴しきった女性が目の前に現れた。



「あっ、あの!
 私渋谷く……いや、亮さんと同じ学校の___」



「もしかして、真知ちゃん?」



「えっ?」



「真知ちゃんじゃない!
 いらっしゃい。あ、どうぞ入って。」



「えっと……、お邪魔します。」