あれから数日、私は未だに捺くんに引っ越しの事を告げられていない。
次の日、仲良しの希美ちゃんには伝えることができた。



「えっ、香織引っ越すの?」



「希美ちゃん、声が大きいです!」



「あっ、ごめん。
 ……で、捺は知ってるの?」



「まだ、言ってません。」



「だよね……、言いにくいよね。」



希美ちゃんは私が捺くんを好きだと言う事を。
唯一知っている人物で。
ずっと応援してくれている大切なお友達。


あのバレンタインのチョコレートを渡す時。
背中を押してくれたのも希美ちゃんだった。



「どこ引っ越すんだっけ。」



「ここから電車で3時間の所です。」



「中学生が会いに行ける距離でもないよね。」



私たちはまだ中学生で。
ここから引っ越す先は、お小遣いで行ける金額じゃとてもじゃないけどなくて。
電車を何本も乗り継いでいける所だった。


携帯も持っていないし。
連絡もとることができない。
今までずっと一緒にいた分。
会うことすら叶わなくなるのは、つらかった。