捺くんの匂い、落ち着く。
いつもの柔軟剤の匂い。
同じの使ってるのに、全然違う匂い。
捺くんの、匂いだ。


電車が来る音が聞こえる。
お別れの時間が、やってくる。



「捺くん、また会えますよね。」



「会えるよ。」



「……約束ですか?」



「ああ、約束だ。」



「私、待ってますよ。」



「すぐ行くから、待ってろ。」



「捺くん。」



「香織。」



「……またね。」



「……またな。」



電車に乗り込み、ドアの目の前に立つ。
締まる直前まで、捺くんの手を握り締めた。
捺くんもぎゅっと、握り返してくれた。
発車の音が鳴り響いて。


私達がそっと手を離した後。
私と捺くんの間に壁が出来た。