もう一生会えないかもしれない。
声を聞けないかもしれない。
この姿を見られなくなるかもしれない。


捺くんはもう、私の一部で。
なくてはならない存在で。
捺くんがいなくなったら私。
私じゃなくなってしまう。



「捺くん。」



言いたくない。
こんなこと、口にしたくない。



「私、引っ越すんです。」



ああ、言ってしまった。
本当の事って認めちゃった。


涙は止まってくれない。
その代わりに、頭を撫でる手が動きを止めた。



「……なんだよ、それ。」



捺くん、動揺してる。
初めて見ました。
貴重ですね。あはは……。



「んだよ、それ!」



泣きそう。
でも私泣いてる。
じゃあ誰が?


……捺くんが?