エロ本を読む気にはならなくて枕の下に手を突っ込めば、ほらあった。



結婚しなくてもいい時代に、私はあなたと結婚したいのですの一言を初めて見たときは心にスッと入って来た。


上手いなぁ、本当。


結婚しなくても幸せになれることを肯定しつつだけどあなたと結婚したいの!という願望をこんなに綺麗に伝えられるって凄い。尊敬。


所々ページの端に折り目が付けられているからこりゃ本当に結婚する日も近いだろうな。



「伊藤さん調子の方どー・・・って妹の方か」

「兄はどっかに行きました。はい閉店ガラガラさよならー」

「はいはいまだ早いですよー」



最悪だ。綺麗だった心が一気に穢れた。
今日の星座占いは悪い。
見てないから知らないけど。


どうして兄が居ない時に会っちゃうかな。



あー憎い憎い。その高い鼻も。地毛っぽい茶髪も。末広型の二重も。桜色した薄めの唇も。



完璧に漫画で主人公と結ばれるイケメンに分類される。



兄貴ぃ、妹が困ってんのにあんたどこほっつき歩いてんの。



「今日19時で上がるんだよね。それから一緒に呑みにいかない?」

「嫌だ」


誰が行くかボケ。


「焼き肉奢るよ」

「向かえのスタバで待ってる」

「(掌の返しようが上手いクソガキだな)」


肉に罪はない。
他人の金で食う程焼き肉は美味いものである。