「取り敢えず乳首隠してくれません?」

「普通に上着てって言えよ」



遠藤透は少なからず動揺していた。
あれ、これが普通の反応なのか?と。
いやそんな訳が無い。


彼氏が寝取られたんだぞ?
しかも女ではなく男に。



過去に同じ過ちを犯した大学の同級生(今は立派な医師)は彼女にスマホやパソコン、テレビなどを浴槽に沈められたのである。


それを聞いた時は女を怒らせると想像の遥か上のことをしてくると学んだ。


その学びは間違ってないと思うのだが。


思うのだが。


「私帰るからこの鍵机の上に置いといて」

「え、あ、うん」

「じゃ、お邪魔しました」




こんなことってあるのか?



この家の合鍵らしき物を預けられ残された俺は呆然と閉じられたドアを見つめるしかなかった。





────なにあれ、めっちゃ面白い。




そこにはもう、新しい珍獣を見つけたごとくの好奇心しかなかった。