服はゆったりとした裾広がりの長い白いシャツのようなものを羽織っていて、その裾も長い髪と共にふわふわと風になびいている。下にはズボンも穿いており、よくよく見てみれば部屋着やパジャマのようなくだけた恰好なのだが、一瞬その儚い雰囲気からまるで白いワンピースに身を包んでいる少女のような印象を受けたようだ。

別に、そういうのが趣味という訳ではないんだが…と、桐生が頭の片隅で自分を冷静に分析していると、隣で立花が控えめに声を掛けて来た。

「桐生さん。あの人、何か様子変じゃありません?フラフラしてるし見た目もなんか…ホラー映画のサ〇コみたいで怖いし」

「お前…。そっちかよ」

自分が受けたイメージとはあまりに違い過ぎるその言葉に思わず脱力する。でもサダ〇はあまりに酷くないか?と、心の中だけでツッコミを入れた。

「え?何がです?」

「いや、何でもない。気にするな」

気を取り直すと、二人その女の後ろ姿を目で追った。

「あ。あっち行っちゃいましたよ。追い掛けますか?」

その不思議な女は、先程の集団の方へと歩いて行く。だが、特に周りを気にする風でもなく男たちの横を通り過ぎようとしていた。が、案の定…。

「あ。絡まれてますね」

すっかり取り囲まれていた。

「…どうします?助けますか?」

あくまでも冷静にこちらの判断を待つ立花に内心苦笑を浮かべながらも。

「何、考えてんだろうな?」

こんな時間に。危険な街に女一人でフラフラと。そこには違和感しかない。

本来なら、すぐにでも駆け寄って救い出すのが適切なのだろうが、桐生はイマイチ踏み出せないでいた。