「何だかんだ彼女の思惑通り、良いように乗せられてしまっていたんだね。しっかりしないとダメだね。桐生さんにも釘を刺されてしまったし」

そう言って、圭は困ったように眉を下げて笑った。


香帆が去った後、圭は桐生たち二人に礼を述べた。彼らのお陰で強引に話を持っていかれがちだった彼女を納得させ、退けることが出来たからだ。

もしも、あのまま二人が現れなかったら、最終的には香帆を怒らせて大きな問題へと発展していたかも知れない。それを考えると、やはり素直に助かったという気持ちの方が強かったのだ。

それを素直に伝えると、桐生は真面目な顔をして圭に向き直って言った。

「お前が如月を守ろうとしていたのは十分解る。だが、写真を盾にされていたとはいえ、相手の思うままの条件を呑んで振り回されて、それで逆に自分の大切な奴を傷つけてたら元も子もねェだろうが。まあ、写真を確認する為の方法としては、分からなくもねぇんだがな」

桐生は腕を組むと小さく息を吐いた。

(紅葉を…傷つけていた?)

その部分に自覚がなかった圭は、その言葉に驚き瞳を見開いていたが、桐生は言葉を続けた。

「ま、それがお前なりのやり方なんだろ。優しすぎるんだな、お前は。それはそれで良いことなのかも知れねぇけど。だがな、あんまりそんな風だと…」

桐生はそこで一旦言葉を区切ると、二人の様子を横でキョトンとして見つめている紅葉に視線を移しながら、圭の耳元へと口を寄せた。そして、耳打ちをするように圭にしか聞こえない程度の小さな声でそっと囁いた。


「オレが紅葉を貰っちまうぞ?」

「……っ…!?」