遠くの方から今朝一番のチャイムが鳴り響く。
「……うっせ」
今では誰も近づかない廃校舎の屋上。
「正門から一番遠いから」という理由で手放した校舎は綺麗なまま、取り壊しの予定のない場所で一人。
澄み渡る空を見つめる【牧野來(マキノライ)】は少々気が立っている。
…たく。なんでオレが……。
黒髪の所々に銀色のメッシュが入った頭に、生まれつきの鋭く尖った目は灰色がかったブルー色。
元々つり目の來が無表情になれば、自然と怒っているのだろうと恐れられ、今では不本意に近づく者はいない。
実際、來自身人との付き合いが苦手なため下手に機嫌を取るよりは気楽でいい。
そんな感情を持ち合わせていた二年前。
まさか來がヒトを助ける部活。
通称、【スケット部】に入部し、部長を勤めるとは思ってもみなかった展開だ。
「あークソ。アイツ、今度会ったらコロス」
硬いアスファルトに拳を振り下ろし、地味に痛かった手で顔を隠す。
そもそも、來から好意的に入ったわけではない部活に今でも居るのは機嫌を悪くさせた【人物】の所為だ。