・・・っとととなりの人のひざの上におじさんがぁぁっ!!!!
私の隣に座るキレイ系なお姉さんのひざの上に、例のおじさんが座っていた。
お姉さんはまさかのノーリアクション。
美人だからこーゆーことに慣れてるってわけですか!?
でも、何かおかしいんだよね・・・
普通、こんなことが起きたらみんなもっとザワザワしたりするはずなのに、騒ぐどころか乗客の皆さんは気づいてないご様子で。
私が上げたさっきの叫び声の方が怪訝な顔で見られたんですが・・・
『お前、俺が見えるんか?』
・・・はい?何をおっしゃってる?このおじさんは。
いきなり例のおじさんに問われたのは、俺が見えてますかーってこと。
・・・いやいやいや、見えてるに決まってるでしょ。ハッキリ見えてますけど。
『ほんまに俺が見えとるんか?』
…もしかして、この人自分が見えないとか信じ込んでる、いろいろこじらせちゃったヤバイ人?
だったら絶対関わりたくない!!
だっておかしいもんね、電車で人のひざの上に座るとか。
『ほんまは見えとるやろ、返事せんかい』
私なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだろう・・・
初めて感じる気味の悪さと恐ろしさに目に涙を溜めていると、私と同じくらいの年の男の人ががおじさんのもとにやってきた。
『もう、木本さんそれは怖いですよーこのやり方で何回失敗してると思ってるんですか』
『あぁ、すまんすまん。またやってしもたな』
知り合い、なんだ、この人。
染めてるようには見えないけど、茶色っぽい髪と、髪と同じ色をした瞳。
悪い人ではなさそう。
よく見ればおじさんも、普通の人だし。
行動は全く普通じゃないんだけど。
『びっくりさせてごめんね、このおじさんは木本さん。で、俺は佐々田 零人(ささだ れいと)。マコから何も聞いてない?』
この人たちは一体なんなんだろう。
マコって誰?
私を誰と間違ってるんだろう。
さっき、やっと少し和らいだ懐疑心が、また強くなる。
気づけば、電車は私が降りる駅に止まっている。
救われた…!!!
これで一安心。
『人違いじゃないですか?私、マコさんっていう人知らないです。急いでるんですみません』
席から立って、がばっと勢いよく頭を下げて
電車を降りた。