恥ずかしい気もするけど悪い気はしない。
近い、なんて言ってるけど。
本当はもっと近くてもいいとか思ったり。
爽太もそれが分かっているから、離れようとはしなかった。



「詩羽。」



「なあに。」



そう言って振り向くと、爽太は唇にキスをした。
触れるだけのキスのあと。
深く深く、キスをした。
何度も何度も。
痛くなるまで唇を重ねた。


触れるだけで身体に緊張が走って。
息をするのも忘れて。
うっすらと目を開けると。
整った爽太の顔が視界いっぱいに広がって。
またキスをする。


足りない時間と寂しさを埋めるように。
無我夢中で私たちは、キスをした。


帰り際はやっぱり寂しくて。
毎回強く抱きしめられる。
待ってる、と弱々しく呟く爽太は力なく笑い。
笑顔で手を振る。


その抱きしめる力が日々衰えていることに。
私も爽太も気づいている。
もう、あまり時間がないことに。
私たちは、気付いている。


だからこそ、私たちは笑うんだ。
笑って、いたいんだ。