臆病なわたしたちは

友達という言葉に露骨に嫌な顔をしつつ、透也は話を続けた。

「よくこいつの友達続けられるな...あんた、葉月、だったか?名前では呼びづらいから名字「杉宮!」

「なんだよ、急に...」

透也がそれを言った瞬間に、それまでの会話を黙ってみていた流奈は、しまった、と思い、透也に声をかけたが遅く、葉月は不自然なほどの笑みを浮かべて透也を見ていた。

「葉月、落ち着け。」

「うん、悪気はないってわかってはいるんだよ?だけどさ。」

「気持ちはわかる、だが、とりあえず落ち着け。」

「なんだよ、名字聞いただけだろ?」

突然目の前で自分の理解できない言い合いを始めた流奈と葉月に不満げに言った透也の一言は、なんとか堪えていた葉月の我慢をへし折った。

「葉月だよ...

...名前じゃなくて名字が葉月だよ!!桜って感じしなくて悪かったなぁ!!!!」

葉月桜。彼女にとって名前は強いコンプレックスだったのである。