「芽衣子」

「え?」

厄介ごとのついでに出会った、厄介な出会い。

「安達芽衣子」

「めいこ」

「給料が入ったら、ちゃんとお礼するから」

「うん」

「だから、今日も泊めてください」

掴みかけたお箸を置いて、目の前の男に頭を下げた。

「もちろん」

顔を上げると、やっぱり柔らかな笑みがそこにあった。

「ありがとう」

「どういたしまして」

なんとなく思うこと。
たぶんこの男は、とても甘い。
それは今まで出会ったことがないくらいに、甘い。

それが少しだけ、心地良いと思った。

「"めいちゃん"」

「・・・へ?」

「鍋、冷めちゃうよ?」

「・・・うん」

照れくさいと、思った。