こんな状況で、誰かに会いたいとも何処かに行きたいとも思わないし、結局お金だってないままだ。

「そっか」

「・・・」

もうお願いだから、放っといて欲しいと思った。
惨めな私が面白いだけでしょう?

「今日は鍋をしようと思って、買い物して来たんです」

「・・・」

「だからさ、」

冷たい手が髪に触れたから、俯いていた顔を思わず上げた。

「一緒に帰ろう」

ユルリと細められた目尻に、涙がまた溢れ出た。





「本当は、お金を返してもらって今日中に出て行く予定だったの」

「うん。別に気にしてないよ」

テーブルにガスコンロを置いて、その上に出来立てのお鍋を乗せた湊結児が私を見て笑う。

「給料が入ったら、お金返すから」

「お金?」

「うん。お鍋代とか宿泊費とか、あと水道代とか・・・」

「そんなのいらないよ?」

「でも、」

「お姉さんが居るのが迷惑だと思っていたら初めから連れ込まないし、俺的には給料日まで居て欲しいくらい」