もしかしたら少しは使われているかもしれないけど、それでもまだ給料一か月分くらいは残っているはずだ。
それを返してもらえば、とりあえず給料日までホテルに泊まることは出来る。
さすがに追い出された家の家賃に使われるのは納得いかないし、あの男だってそれくらいの常識はあるだろう。

この部屋の家主は夕方まで帰って来ないみたいだし、ひとまず荷物は置いたままにして、あの男と話をしてこよう。
たしか今週はあの男も夜勤続きのはずだから、昼間は家に居るはず。
それで話をつけて、お金を返してもらったら、配送業者を呼んでこの段ボールたちを一度実家に送ることにしよう。
衣替えだとか言えば誤魔化せるだろうし。
それで駅前のビジネスホテルを取って、ここを出よう。

一晩泊めてくれた湊結児には、福岡のお土産と美味しい物を食べられるくらいのお金を置いて行こう。
直接お礼を言いたい気持ちもあるけれど、何となく湊結児と居ると調子が狂う気がするから、帰ってくる前に家を出るのがベストだろう。