そうだった。そうだよ。悠長に思い出に浸っている場合じゃない。

「あれ?」

ロフトからリビングを見下ろして首を傾げる。
カーテンが開けられた部屋の中に、外からの光が射し込むけれど、狭い室内はしんとしている。誰もいないし、気配もない。
そう言えば、今は何時だろうか。
私は枕元に置いた携帯を掴み取った。

たしかあの男、えーっと・・・そう、結児君。
朝からバイトって言っていたよね?それって何時からだろう・・・。

「って、え!?もう10時!?」

驚いた。携帯の画面に並ぶ【10:18】の文字に驚いた。

私、そんなに寝ていたの?
人様の家で、まさかの爆睡!?
たしかに研修明けで仕事も休みだけれど、だからって・・・。

「失敗した」

私は急いでロフトを下りて部屋中を見渡すけれど、案の定誰もいない。ただ代わりに、置手紙があった。
テーブルに置かれたそれを掴み、カーペットの上に正座する。