「そんなの気にしなくていいよ」
「コンビニ寄ろうと思ったけど、ちょっと無理っぽい」
不意に私を見た瞳が、ほんのりと充血していた。
「大丈夫だから。早く帰ろう」
さっきまでよりも熱くなっている手に気づいて、私はすぐに答えると、小さく頷いた結児君を引っ張って歩を速めた。黙っていたのも、きっと喋ることすら辛かったんだ。
「薬は?貰ったよね?」
アパートに着くとすぐに、結児君から部屋の鍵を奪い取って、玄関の扉を開けた。
まさかこんなにも抵抗なくこの扉を開けることになるなんて、数時間前には思ってもいなかった。
「まだ飲んでない」
「・・・え、なんで!?」
扉を開けて振り返る私を、結児君が先に入るように目配せをするから、仕方なく玄関でパンプスを脱ぐ。
「なんでって、ずっとあそこに居たから」
「・・・じゃあ、ご飯は?近くにコンビニもあったでしょう?もしかして食べてないの?」
「食べてない」
「なんで!?」
勢いよく振り返ると、結児君が顔を顰めて私を見た。
「だから、逃げられたくなかったんだよ」
拗ねたような口調に、そんな場合じゃないのにときめいた。

