暫く不思議そうに考えた後で、結児君は理解したように、本来は近いはずの道の先を見た。
その道から帰ると、途中で例の男のアパートの前を通ることになる。それはもうずっと避けている場所だ。
「・・・嫌なら、結児君はそっちから帰ってもいいよ」
「うーん。めいちゃんはなかなか面倒だね」
「え?」
重なった視線が、不安に泳ぐ。
結児君が発する言葉一つで、バカみたいに動揺する自分がいる。
「そういうところも可愛いけど、今回はムカつく」
「結児君?」
「安心して?一緒に帰るから」
甘く垂れた目尻を細めた結児君が、今度は優しく私の手を引いた。繋がれた手が熱くて、胸がいっぱいになる。
ゆっくり歩いているのに、結児君の吐く息は少し苦しそうで、握る手にきゅっと力を入れた。
隣を歩く横顔を見ると、ただ真っ直ぐに前を向いていた。
まるで何かを考えるように、ただ真っ直ぐ。
「めいちゃん、お腹空いてる?」
「へ?」
黙っていた結児君が口を開いたのは、角を曲がりアパートが見えてきた頃だった。
「冷凍のうどんくらいしかない」

