途中から、何を言っているのか自分でもわからなかった。
きっと、こんな女ナンパして失敗したって思われている。
もしかしたら、あの男の部屋にまで聞こえているかもしれない。
だけど、涙がどんどん溢れてきて、止められなかった。

もう、帰りたい。
どこにも帰れないくせに、そんなことを思った。

「うん。それは困るから」

「・・・へ?」

泣いたせいで火照った頬に、雪みたいに冷たい手が触れた。

「お姉さん死んじゃったら、困るから」

「な、なに?」

二つの冷たい手が私の頬を包んで、少し垂目の瞳と視線を重ねさせる。
何が起きたのかわからなかった。だけどその瞳の中が、雪の結晶みたいに綺麗なことだけはわかった。

「俺と一緒に帰ろう?」

「・・・」

「ね?」

気づいたら、頷いていた。