まだ片づけを終えていない部屋は、一人暮らし向けの間取りなのに広く感じる。その理由は考えなくてもわかる。
どうやら自分が思っていた以上に私は、彼のことが好きだったらしい。


結局、真奈美と二人で飲みに行ったけど、全然酔えなかった。
誰もいない一人きりの部屋に帰って、ベッドに腰をおろすと、どうしようもなく虚しい気持ちになる。
実家から送り返してもらった段ボールの中身を見る気にもなれない。開けたところで、どうでもいい男との思い出が出てくるだけだ。
もう今となっては、どうでもいい思い出。
どうでも良くなかったはずなのに、どうでも良くしてくれた。
全部全部、結児君が居たからだ。

結児君が変なことばかり言うから、意味わかんないくらいに甘やかすから、気づいたら傷ついたことが遠い昔のことのようになっていた。

「なんで、信じられなかったんだろう」

誰に向けるでもなく呟いた言葉は、夜の静けさに消えるだけ。
最悪で最低な気分だ。
ベッドに倒れ込むと、枕に顔を埋めた。

もう、忘れないと。