どれだけ最悪な出来事が起きても、世界は同じように動いている。
どれだけ私の瞼が腫れようと、朝は容赦なくやってくる。
そして仕事に向かう。
人生はいつだって、自分の感情だけではどうにもならない。

「新しい部屋はどう?」

久しぶりに真奈美と仕事の上りが一緒になった日曜日、病院の近くの居酒屋で飲むことになった。

「まだ荷物が片付いてないから」

「明日休みだっけ?」

「うん。だから一日掃除」

「じゃあ、片付いた頃に遊びに行くね」

ニコリと笑った真奈美に、結児君との話はまだしていない。

結児君の部屋を出た翌日の朝、出勤してきた私の顔を見た真奈美は、何かを言いかけて口を噤んだ。
触れるべきタイミングを見極めるのが、真奈美はいつだって上手い。

新しい部屋への引っ越しは、真奈美のお兄さんの助けもあってすぐに終わらせることができ、その流れで、実家の母親に電話をして、彼氏と別れたことも漸く伝えられた。
さすがに他に女がいたことは言えなかったけれど・・・。

それでも、実家にあるベッドと荷物を送って欲しいと頼んだ私に、母は文句を言いながらもすぐに送ってくれた。
だから昨日からはある程度の生活が出来るようになった。