「お姉さん、どうしたの?」

何?無視でもされてるの?それともナンパとか?それなら無視もされるか。

「おねーさん?」

だいたい、こんな寒い中よくナンパなんてするよね。
その元気を私に分けて欲しいくらい・・・。

「ねえ、お姉さん?聞こえてる?」

「・・・へ?私?」

突然、至近距離で聞こえてきた声に、思わず振り返った。

「うん。さっきからお姉さんに話しかけてる」

「・・・え?」

意味がわからなかった。
さっきのあの男の言葉も意味がわからなかったけれど、今目の前に現れた男の言葉もまた、理解に苦しむものだった。

「それ、お姉さんの荷物?」

目の前に現れた男は、コートから少し出た指先で段ボールを指した。

「あ、はい。そうですけど」

「・・・」

たぶん、身長は170後半くらいだろう。
柔らかそうな黒い髪には、緩いパーマがかかっている。
色白の顔は、寒さのせいか鼻が少し赤い。
薄い唇に、少し垂目の目元。でも二重が綺麗。
見るからに若そうな男は、たぶん大学生だろう。