「……んだよ、お前捨てられたのか?
珍しい格好してんなぁ。」

「……これが我の当たり前。」

真っ暗な公園の中で、1人うずくまる魔女を見つけたのは、誰にでも優しい人間だった。


人間は自分の目の前にいる相手が魔女だとはつゆ知らず、ニコリと笑いかけて喋りかけた。

「お前、1人か?」


「貴様っ我を誰だと……っ」

「ここは人が捨てられる場所だ。
お前、捨てられたのか?」

一瞬怒りにのまれそうになった魔女は、慌てて怒りを沈め、そのすぐ後にはポロポロと涙が出始めた。


「ちょ……いや、泣くなよ……。」

オロオロと慌てる人間は、依然まっすぐと相手を見つめている。



「……昨日、夕の刻、母が我をここへ置いていった。


どれもみなそういうものだ……。」

魔女は15になると親から離れ1人で暮らさなければならない掟がある。

それを知っているからこそ、魔女は別れが惜しくて泣いていたのだ。

どこにも行くあてのない不安と、
これから1人で生きていく恐怖に打ち震えていた。


「俺もここで捨てられたんだよなぁ…。
うし、おい、お前行くぞー。」


「……ど、どこへ行くのだ。」


「今日から俺の兄弟になれよ。
行くあてねぇなら面倒見てやる。」


小さき魔女は目を大きく見開いて、
人間に向かって笑いかけた。

「悪くない。」

______________________________

10年たったある日。
魔女と人間は再び向き合いお互いを指で指した。

「……?!お、お、お主人間か?!」

「お、お前魔女なのか?!?!?!」



結局大人になるまで気づかなかった。




END