「それで、イツキさんってどんな人なの?」
お昼の学食で私が今好物である海鮮丼を口にする前に、くるりと綺麗にカールされた髪を揺らしながら、数少ない春先に出来た友人である知花に尋ねられた。
「んー優しくて紳士な感じかなぁ…
背が高くてよく手が空いてる時とかに
話しかけてくれたりするよ、ってなんで?」
「いやー、雪から男の人の話を聴くの初めてだから一体どんな人なのか気になって…」
自分は学食までの廊下で何気なくバイト先の話をしただけのつもりだったが、意外にもそのことに友人は興味を持ったらしかった。
「へっ、普通にバイトの話をしただけのつもりだったんだけど。」少し驚きながら言う。
「と言うか、イツキさんも親切なんだろうけど小説の話を数秒広げただけなんだから謝らなくても良かったんじゃない?」
「そんなものなの?」
「そんなものだよ。ちょっと昔のこと引きずりすぎじゃないの?」
「そんなつもりはないんだけどなぁ。」
確かにそう思って、海鮮丼を口に運ぶ。うん、やっぱり美味しい。
「でも雪、もっとそのイツキさんとかと話してみれば、少しはお付き合いとかに対して気楽になれるんじゃないの?」
友人は私が恋人をつくるという行為に対して億劫な事を気に掛けてくれたようだった。
「ただのバイトと常連さんだからなぁ。
そんな沢山話す機会ないんだよね。」
「それもそうだね。」とそこで話題は一つ前の講義の内容に移り変わった。
