「確か、雪ちゃんは今日が樹くんと初対面だったよね?あの身長が高くて、パンケーキ頼んでた男の子」

無事にバイトが終わり更衣室へ行くと
マスターであり、オーナーの郁穂さんに、そう話しかけられた。

「あぁ…お知り合いなんですか?」
「そうなんだ、友人の弟さんで
自分は機械が苦手だから、メニューの写真を撮ってくれる人探してて紹介して貰ったんだよね。」
メニューの美味しそうな写真はあの人が撮っていたのか。

「パンケーキ凄く美味しそうに食べていらっしゃってましたよね。」
私はカウンター席にケーキを運んだ時を思い出しながら言う。
「ははっ、甘党って感じがしないもんね
佐藤樹くんっていうんだけどね、写真撮ってくれた時にうちのケーキもいくつか試食して貰ったんだけど、結構気に入ってくれたらしくてさ、大抵毎週土曜日に来てくれてるんだ。」
「なるほど、それでやけに店に馴染んでいたんですね」と1人で納得する。

「佐藤さん…なら“お砂糖さん”ですね。」
何気なく思いついたことをそのまま呟くと
「いいねそれ、スイーツ好きの樹くんにぴったりだ。」
と屈託のない笑顔で郁穂さんが言ったので

その後のカフェで樹さんはわたしのせいで皆から『お砂糖さん』と呼ばれるようになってしまったのだった。