樹さんと出会ったのは春過ぎのことだ。

その春、私は大学に通うために上京して来た。両親は都心の大学に通いたいという私を最後まで心配しつつ、応援してくれた。

大学に行く合間を縫ってバイトをすることにした私は家から一駅のお洒落でケーキが美味しいカフェで働くことになった。

私の入ったバイト先のカフェには時々、窓側のカウンター席に座って本を読んだり、パソコンへ向かったり、マスターや他の従業員と仲良さげに話しているいわゆる常連さんがいた。

それが樹さんだった。
大学生だという樹さんは背が高く、元々なのか髪は少し茶髪に近い。
色味の少ないシンプルで落ち着いた服を着ていて大抵黒のリュックを背負っていて、
大人で落ち着いた雰囲気のある人で、身長のせいなのか一見、怖いそうだと思う人もいるようだった

けれど失礼を承知で言わせてもらうと、
樹さんに対する私の第一印象は
“可愛い” というものだった。