時計をみるとまだ充分電車に間に合う時間だ。私は胸を撫で下ろし、駅まで歩いて向かっていく、金木犀の木の横を通り抜けようとした時 私は気づいた。
いや、そのずっと前から薄々と気づいていたのかもしれない。

無論、この通りはいつもと変わらない。
王子様が空から降ってくるわけでも、凶器を持った不審者が私に向かって来るわけもなく、今をきらめく有名人や昔の幼なじみが私の前に現れたわけでもない。

気づいたのは今日そう私、藤町 雪が完全に浮かれているということに対してだった。

今日は珍しく一番最初のアラームで起きれたし、ちゃっかりお気に入りのスカートを履いている。
ただ単にお洒落をしたい日はあるけれど、白のシュシュはなんだか気合いを入れている私を象徴している気がしてつけられなかった。

可愛く見せたいけれど、気合が入った格好をするのは少し恥ずかしい相手…
ずっと気づいていないふりをしていたが、
それには1人だけ思い当たりがある。
私には今日、講義以外にもバイトという大切な用事があった。

今日はバイト先であるカフェに樹さんがやってくる日だった。