きゃあきゃあと女の子達が騒いでいる大きな固まりの端を横切る。
何かあるのか、女の子達は可愛く頬を紅潮させて中央に目を向けている。
可愛いなぁ
通りざまにそう思ったのは嘘ではない。
私はそんなこと、出来ないから。
ブスで、地味で、小説しか取り柄のない私には恋愛なんて似合わない。
それに……
私には笑う資格がないから。
笑っちゃ、いけないから。
ついいつもの癖で気配を消して歩いてしまう。
気をつけなきゃ。
教室で気を抜いた時に気配が突然出たら他の人にとっちゃ、いきなり出現してきた人にしか感じないから。
目立つのは御免だ。
私の席は窓際の一番後ろ、最高とも呼ばれる席。
周りの席は人がいなくてがら空き。
多分私の事が嫌だからこんな席にしたのかな。
規則で1年間同じ席で、一学期の最初に席を自由に決められるらしい。
何故か私だけ勝手に決められてた。
まぁ、最高と謳われる席なら文句はないけど。
私はバッグの中から大量の原稿用紙を取り出す。
カリカリカリ……
私の耳には周囲の雑音が一切聞こえなくなって、シャープペンの音だけがやけに大きく聞こえる。
もう1つ聞こえる音と言えば…………
─────紅く焼けたように真っ赤な夕日は、○○の心を揺さぶる。
書いているそれの内容。
いわゆる、脳内再生のようなもの。
今私が書いているのは小説。
1番最初に芥川賞を取った事があって、それ以降何故か毎回直木賞を取ってしまう。
血の描写が多い小説ばかり書いているのだが、逆にそれが人気らしい。
そういう職業をやっているだけに、リアルな描写が出来るんだ。
確か私の名称は、直木賞の常連…なんとか、だった気がする。
最後の部分忘れちゃったや。
でもまぁ、私には絶対に当てはまらない !ってなった覚えがある。