不意に意識が覚醒する。

一つ欠伸を溢してからクローゼットを開き、制服を出す。

学校に行ったらあいつらに聞きただされる事だろう。
嗚呼、もう今から憂鬱だ。
適当に受け流す以外に選択肢はないだろう。

今日も今日とて完璧に変装をした私は家を出ようとするが、あることを思い出す。

あ、やべ。
昨日の服、洗濯し忘れてた。

私は来た道──と言っても家の中だが──を引き返し、脱衣場へと急ぐ。
洗濯機が回り始めたのを確認し、今度こそ家を出た。

時間的にもう間に合わなさそうなので、開き直ってゆっくりと歩く。

学校に着くと、私は少しだけ急ぐ。
慌てて来たという雰囲気は出しておかないと演じてるキャラとしてどうかと思うからだ。

「す、すいません。寝坊してしまいました」

教室に入り、息を弾ませるフリをしながら小声で教師にそう伝える。

「明日からは気をつけてね」

優しい先生で良かった。
私は自分の席に座る。

勿論私の周りにはあいつらがいるのだが……
強烈な視線を感じる。
無視しよう。

「おい」

呼ばれた気がした。
無視しよう。

「おい」

また呼ばれた気がした。
心做しか肩を揺さぶられる気もする。
無視しよう。

「何故無視する」

え、馬鹿なの?
馬鹿なんですか?
馬鹿なんですね?
考えてもみなさい。
自意識過剰な訳分からないし知り合いでもない不良男に何回も呼ばれるという状況。
無視ですよね??

ていうか無視されている時点で拒絶されてるってことに気づけないのかなぁ??


「ふっ」


これだから自意識過剰なやつは。


「おい。お前今馬鹿にしたか?」

「いやぁ? 気のせいではないですか?」


私は自意識過剰を見ずに前を見据えながら言った。
煽るのは得意だ。
今こいつを煽ることに意味があるかどうかは置いておいて。