「これがなにか?」
「その文章構成、澄川先生に似てる」
………。
澄川 美結(スミカワ ミユ)
通称、澄川先生。
これで分かった人もいるかもしれない。
そう。
私のペンネーム、だ。
何故だ。
何故お前がその名(私のペンネーム)を知っている。
「はい?
誰、澄川先生って」
「小説家の名前だよ~」
童顔がきゅるんと効果音がつきそうな顔で言う。
「蓮鵺は澄川先生の大ファンなんだ!」
へえ。
物好きもいるもんだな。
「だから?
その澄川美結って人と文章構成が似てるから何なの?」
「何で…澄川先生のファーストネーム知ってんの?」
自意識過剰が言う。
…あ、やべ。
顔写真、祝いの場は公開してないが雑誌の取材等でその名を使いすぎていて当たり前になっていた…。
こいつらは私(ペンネーム)のフルネームを言っていない。
「そういえばそんな小説家もいたなって思い出しただけ。文章構成が似てるだけじゃないの?」
「いや、それでも似すぎだ」
「……」
「「「「「…………」」」」」
この空気に耐えられなくなったのか、童顔が言った。
「そっそういえば聞いてなかった!
キミの名前、何?」
「…隅山、美優」
「澄川美結さんに名前似てる…」
煩いのが言った余計な一言。
「「「「………………」」」」
Oh…
同じ空気、再来。
て、いうか。
何故こんなやつらに構う必要がある?!
執筆に専念しなければ。
私はお気に入りのシャープペンを持ち直し、原稿用紙へと視線を移す。