「それより、ソイツどうする気?」


真村くんが楓くんを指差しながら聞いてきた。


楓くんは息はしているものの、意識はない。


「気絶するほど殴るなんて、相当だな。」


そう言って真村くんは呆れた顔をする。


確かに自分でもやりすぎだと自覚している。


だけど、頭に血が上った私は何も考えられなかった。


でも、そんな中でも自営本能はあったみたいだ。


楓くんの顔は、最初の一発しか殴っていなかった。


真村くんもそれに気づいたらしい。


「綺麗に顔だけ避けてんな。


もしかして、喧嘩のプロ?」


「そ、そんなわけないじゃないですか!


真村くんじゃあるまいし…あっ!」


そうだ、すっかり忘れてたけどこの人はあの真村くん。


なのにどうして、私はそんな彼と二人で話しているんだろう。


急に冷静になって、疑問が浮かんできた。


「喧嘩なんて俺も当分してねーよ。」


「え…そうなんですか…?」


「俺からはな。」


なるほど、自分から手を出す喧嘩をしていないということか。


「んなことより、マジでこいつどうすんの?」


「なんとか記憶消せないかな…」


「普通に無理だろ。」


「分かってるよ。」


不思議だ、真村くんと普通に話せている。


良くない噂ばかりあるあの真村くんと。


「」