職員室には、教師な何人かしかいなかった。

皆、部活動などに行っているのだろう。

私は担任が見つけられず、仕方なく話したこともない美術の先生の所へ行った。

「あの、すいません。」

「はい?」

50代くらいの、小太りの女の先生だ。

眼鏡をかけた顔をこちらに傾け、ほのかに笑う。

「美術部の活動時間を教えてほしいんですけど。」

「あら、入部希望者?」

「はい、そうです。」

入部するつもりは全くなかったが、説明するのも面倒でうなずく。

第一、説明の仕様がなかった。

「活動時間は、月、木、金曜日なの。時間は一応六時まで。展覧会とかが近いと、皆九時くらいまでいるみたいだけどね。」

「じゃあ、火と水曜日は休みなんですね。」

「ええ。たまに自主的にしている子はいるみたいだけど、今は展覧会も終わったばかりだし、皆来ないわね。」

「そうですか。」

私は思った。

今日は金曜日。昨日は木曜日。

(土日は学校が休みだから、火曜日まで会えない…)

私は、茜は皆がいない時に一人で絵を描いているのだろうと思った。

実際、活動曜日にいなかったのだからそうなのだが、初めからなんとなくそんな気がしていた。

茜は群れるタイプではない気がした。

「ありがとうございました。」

「いいえ。入部したくなったらいつでも来てね。」

私は軽く会釈をしてその場を離れ、職員室の戸口でまた会釈をして扉を閉めた。重くきしむ音がする。

(火曜日まで会えないのか…)

私はため息をついた。