「蜘蛛のオヤジさんよ、腹減ってんだろ?
どうだい、ひとつ地面に降りてきちゃあ。
地上には食いもんがいっぱい落ちてるぜ」

(ふん、その手に乗るかよ)
蜘蛛は思った。
「俺様は、お前達みたいに、そんな腐りかけの肉なんざぁ、食わねーよ」
蜘蛛は強がって見せたが、内心は痛い所を突かれたと思った。
確かに、ここ二日程、食べ物にありついていなかった。
しかし、蜘蛛が蟻達の誘いに乗らないのには、訳があった。
もし、自分が、蟻達の誘いに乗って、足を地面につけた途端、蟻達は、大勢で襲って来るに違いないと、蜘蛛は思っていた。
一匹、二匹なら蜘蛛も決して負けなかったが、あんなに大勢で襲われた日には、たまったものではない。

蜘蛛は再び、罠の端にある葉影に隠れ、じっと獲物を待った。
そのうち蜘蛛は、空腹のせいか、うとうとと、居眠りを始めた。