ガラ。

教室のドアが開いて、相原斗真(あいはらとうま)が顔を覗かせた。

「噂をすれば・・」

真澄はニヤニヤしながら陽子を見た。

「真澄、あんた顔ヤラシイよ。じゃ、ちょっと行ってくる」

陽子はそう言って、斗真の元に駆け寄った。

「斗真、おはよ」

「おはよ。――陽子、ごめん」

「どうしたの?」

「今日のデート、別の日にしてくれないか?」

斗真の言葉に、陽子の表情が曇る。

「楽しみにしてたのに・・。何か用事でも出来たの?」

「実はオヤジが倒れちゃってさ」

「え!おじさんが?大丈夫なの?」

「たいしたことないんだけど、ほら、俺のとこ離婚してるだろ?面倒みるの俺しかいないからさ」

「そっか・・」

陽子は少し考えて、

「そうだ。じゃあ、今日ご飯作りに行ってあげるよ」

「マジで?」

「うん。料理ならまかせて・・とはいえないけど、少しなら出来るから」

「助かるよ」

と、斗真は笑顔を見せた。

「じゃあ、放課後行くね」