「ただいま」


宮野の声に、佳苗は読んでいた雑誌を閉じた。


時計を見ると、9時を少し回ったところだった。


「おかえりなさい」


「パパ、おかえり」


宮野は陽子を見て、


「今日はデートじゃないんだな」


と、笑った。


「あなた、ご飯は?」


『食べてきた』


言おうとして、ふと考える。


最近あまり佳苗の料理を食べてないなぁ・・・。



「風呂に入った後食べるよ」


お腹は空いてないが、宮野はそう応えた。


「・・・あれ?」


――突然陽子が声を上げた。


「パパ、なんだかいい香りがする」