宮野佳苗(みやのかなえ)はベッドの中でウーンと伸びをした。

時計を手に取る。午前7時。

佳苗はベッドから這い出るとダイニングに向かった。

「・・いない」

ボソリと呟くと、佳苗は鞄の中から携帯電話を取り出して電話をかけ始めた。

トゥルルル。

トゥルルル。

コール音が5回鳴った後、相手が出た。

「もしもし」

眠そうな声。

「もしもし、あなた?」

佳苗は不機嫌な声で、

「今どこにいるの!どうして帰って来なかったの?」

「すまん、仕事が片づかなくて会社に泊まったんだ」

宮野礼二はそう行って欠伸をした。

「それならそうと、電話してよ!事故にでもあったのかと思うでしょ」

「悪かったよ。今度からそうする。今日は早く帰れると思うよ。それじゃぁ」

電話が切れたのと同時に、二階から娘の陽子(ようこ)が降りてきた。

「ママ、おはよ」

「おはよう」

「パパは?」

「パパはもうお仕事よ」

佳苗は携帯電話を鞄にしまいながら応えた。

「今日、部活の朝練あるから早く出るね」

「そうだった!急いでお弁当作るわね」