「ママ」


朝ご飯の用意をしている佳苗の肩を、陽子がポンと叩いた。


「なぁに?」


陽子のニヤけた顔。


佳苗は目を丸くした。


「パパとデートしたんでしょ?どうだった?」


「どうだったって・・楽しかったわよ?」


「盛り上がってホテルとか行ったの?」


陽子の言葉に佳苗は吹き出した。


「子供が何言ってるの。ほら、早く食べて支度しなさいよ」


「はーい」


―――佳苗は内心ドキドキしていた。



宮野とホテルに行った。それは事実―――。


何ヶ月振りだろう、夫に抱かれるのは?


この腕であの女を抱いたのか・・・。


そう考えると、胸が痛むが・・


嘆いているだけじゃ、何も変わらない。


――少しずつでいい。



あの人の心を取り戻すわ。