「街で?」

「ええ。今日も偶然この店に入るのをみかけて。――声をかけようか、どうしようか外で30分も悩んじゃったわ」

と、女は恥ずかしそうに笑った。

「私、遠藤理穂(えんどう りほ)。おじさまは?」

「宮野礼二(みやのれいじ)」

「――礼二さん」

理穂は宮野の耳元で、

「ふたりきりになりませんか?」

と、囁いた。

宮野の鼓動が速くなる。

理穂の顔を見ると、お酒に酔ったのかほんのり赤い。

今の宮野に断る理由はなかった。

「――行こうか」