「最近、帰りが遅いのね」

佳苗は朝食を作りながら言った。

「ああ。ちょっと忙しくてな」

宮野はコーヒーを一口飲んで、「タダ働きさ」

「残業代くらいつけてもらいなさいよ」

「言っても、なかなかなぁ・・」

「・・・」

佳苗は目玉焼きを皿にのせると、宮野の前に置いた。

「ねえ」

「ん?」

宮野がパンにかぶりつきながら顔を上げる。

「・・・」

佳苗は何か言いたそうに口を開いたが、少し考えて、やめた。

「どうした?」

「・・ううん。なんでもないの。仕事頑張ってね」

佳苗はニコッと笑った。

・・・

・・・

『本当に残業?』


聞けなかった。

聞けば真実に辿りついてしまいそうで怖かった。