ピンポーン。

チャイムが鳴った。

斗真は父と顔を見合わせて、
「姉ちゃんだ」
と、玄関に向かった。

ガチャ。

ドアを開けると、買い物袋をさげた姉が立っていた。

「早かったじゃん」


斗真の言葉に、遠藤理穂は笑った。

「あんたがお腹空かせてると思って、急いで来たんでしょ」

理穂は家に上がると、前よりも少し痩せた父を見て、

「お父さん、大丈夫なの?栄養とってる?ちゃんと食べないと駄目よ」

「ハハっ。今日はうまいモノ食わせてくれるんだろ?」

「もちろん。私が作ると何でもおいしいでしょ」

と、理穂はおどけてみせた。

「後は、嫁に行くだけだな」

父の言葉に、理穂の顔が凍りついた――が、一瞬のことで誰も気付かなかった。

「そうね。私も早く結婚したいんだけど、なかなかねぇ」


――父には言えない。


母の事があるから・・・。