君の隣で

次の日の朝。

「ふふっ、うふふふふっ」

桐谷桃音中学一年生。

絶頂の朝を迎えております。

「…何にまにましてんの?」

綾乃に指摘される。

でも、嬉しすぎて頬を引き締めることができない。

今、私は綾乃と一緒にサッカー場の観客席にいる。

なんでかって?

それは、昨日の放課後。

頑張ってお守りを渡せた後、陽斗くんにサッカーの試合を見に来て、って
言われちゃったからっ!!

嬉しすぎるよ。

もう私死んでもいい。

いや、死んだら試合が見れない。

死ぬなら試合を見てからだね。

まぁ死にませんけど。

陽斗くんは友達も連れてきていいよ、って言ってくれたから、

1人で行くのはなんか嫌なので、綾乃にも来てもらった。

一応綾乃の恋を応援するっていうことになってるし。

「はぁー。でも、昨日桃音から連絡あったからびっくりしたよー。
まさか陽斗くんの試合が、見られるなんてね。さすが桃音」

「えへへへ、あざぁーっす」

綾乃に向かってかるくVサイン。

ふわっとシュシュでまとめたポニーテールが揺れる。

そう、今日は。

陽斗くんの試合が見れるということで

めっちゃオシャレしてきたんですよ!

スポーツ観戦ということで、おしとやか系&元気で明るい系女子を目指しました!

だからいつもおろしてる髪は高いところで結んでポニーテールにしたんですね、はい。

でも。

オシャレしてきたのは、もちろん私だけではない。

隣で楽しそうに笑っている綾乃。

彼女も今日はとびっきり可愛い。

まぁ、いつも可愛いんですけどね?

三つ編みツインテールに

パステルカラーの服。

可愛いかつ全身の色が引き締まる茶色のスカート。

ゆるふわ系女子というイメージを崩さず、

でもいつもとは違う姿。

やっぱり考えることは一緒。

陽斗くんに、可愛いとこ見せたいもんね?

そりゃそうだよね。

でも。負けないよ。綾乃。

まだ陽斗くんが好きなこと言ってないけど、

いつか言うから許してね。

おっと、試合が始まるみたい。

しっかり応援しなきゃね!!